『御不浄バトル』ブラック企業ぶりの絶妙なリアルさでちょっとお腹が痛くなった

先日芥川賞を受賞した羽田圭介さん、なんと同い年とのことで、昔は「すごい人はみんな年上」だったのが、もはや全然そんなことなくて戦々恐々としています。嗚呼凡人。

芥川賞受賞作の『スクラップ・アンド・ビルド』を読んで、同年代の絶妙なリアルさがおもしろいなと思ったものの、めっちゃファン!という感じでもないので、その後特に羽田さんの作品は読んでいなかったのですが、先日Kindleストアをだらだら見ていたらなんともシュールなタイトルが目にとまりました。

御不浄バトル (集英社文庫)

御不浄バトル (集英社文庫)

  • 作者: 羽田圭介
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2015/10/30

御不浄バトルってあなた。

芥川賞作家ぽくないポップでシュールなタイトルが気になりポチりました。主人公は学習教材を販売する中小企業に就職して2年目の男性。

就職活動にやさぐれて入社した会社は、営業担当が半年も経たずに退職してしまうようなブラック企業。

経理担当の主人公は、いかがわしい会社の内実をなんとなく知りながらも、日々つつましく過ごして事なきを得ていたのですが、ある日の些細な電話対応から、ブラックさの深部に引っ張られていくことになり・・・という内容。

『スクラップ・アンド・ビルド』を読んだ感じで、ブラック企業っぷりとは絶妙に距離を保ったまま物語が終わるのかなと予想していたのですが、そうではなく、ブラックさと相対することがストーリーのひとつのポイントになっていました。

僕はブラック企業に勤めたことはありません(少なくともそうと思っています)が、結局のところそういった会社は、労基法やらなんやら、ルールに反したことをやっているわけですから、まあ普通に考えてそれなりにロジカルに対応してしかるべき権利を勝ち取れるのが妥当だろう、もしそんなことがあれば自分もやろうと思えばできるだろう・・・くらいに思っていました。

『御不浄バトル』の主人公も、わりとそんな感じで、斜に構えつつもやるときはやるでしょう、というキャラクターだったわけで、若干の自己投影をしつつ読んでいたのですが、ストーリーが進み、主人公がブラックさに少しずつ引き込まれていくと、なんとなくお腹が痛いような、嫌な感じがじわじわしてきたわけです。

不意に暴力的な扱いを受けて心身にショックを受けたり、かと思えばあたかも部下を想う上司みたいな雰囲気で懐柔されたり、たぶん、頭では「そういうやり方だ」と理解していても、実際にやられたら、無意識のうちに「服従したほうが楽」となってしまうのではないかという感じ。

きっと世のブラック企業も、精神にずっしりくるアメとムチで、暴力的だけど巧妙に、従業員を身動きできない状況にしているのでしょう。いち社員がルールとロジックで立ち向かうというのは、想像よりずっとハードルが高いのかもしれません。

本作は、ブラック企業の実態を描いて社会に問題提起する、という類のものではないと思いますが、作中で描かれるなんとも言えない生々しさがじわじわくる作品でした。

結局、主人公のちょっとした暗躍などもあって、ブラック企業は営業停止になるのですが、それでも必ずしもスッキリせず、どことなく含みを持たせた終わり方になっているのも地味に印象的です。

「こういう人にオススメ!」という感じではないですが、20代くらいの男性であれば無意識のうちに共感している自分に気づく、絶妙なリアルさがありました。

御不浄バトル (集英社文庫)

御不浄バトル (集英社文庫)

  • 作者: 羽田圭介
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2015/10/30

スクラップ・アンド・ビルド

スクラップ・アンド・ビルド

  • 作者: 羽田圭介
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/08/07

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